低体温症を知っていますか?
東病院 副院長 船 木 上 総
風邪をひくと、平熱37度が2度高くなって39度になるのはよくあることですが、反対に2度低くなって、コア温度が35度以下になってしまうといろんな症状が出てきます。これを低体温症といいます。平成14年の夏、トムラウシで二人の女性が亡くなっています。どちらも低体温症による死亡です。このような悲しい事故が繰り返されないように、低体温症についてよく理解し、その予防や適切な処置を知らないと大切な友、あるいは自分の命を失うことになります。なぜなら、低体温症を放っておくと、どんどん体温は下がり、数時間後には死が牙を向けて待ち構えているからです。
熱は体の中でつくられ、また、体の外へ放射や蒸発の形で失われていきます。産生と喪失のバランスが一定に保たれているので、体温は一定なのです。もし、体から奪われる熱が増加すると、熱の産生が追いつかず、体温が下がってきます。山で体温を奪う3人の犯人は、寒冷と風と水(雨、汗)です。ですから、この3つから体をガードする必要があります。夏山で急に土砂降りに会い、身動きができずただ雨に体をまかせていると、しだいに震えが止めれなくなり、歩きもふらつき、眠くなってきたり、ものを忘れやすくなります。もっとひどくなると、震えが止まり、歩くことができず、受け答えもなくなってきます。こうなる前にツェルトを張ったり、小屋に入ったりして雨を防ぎ、塗れたものを着替え、暖かいものを口に入れて、体の芯からも体を温めることにより低体温症を防ぐことが必要です。また、「遠くから高いお金を出してやってきたのだから、少々の悪天でも頂上にいくぞ、そして百名山のひとつを征服するぞ。」という無理が、恐ろしい結果を呼ぶことがあります。「いつでも山は登れるんだ、今日は退却だ。」という、勇気ある撤退が必要です。
そういう私も、フランスのモンブランでスキー滑降中にクレバスに落下し16時間も宙吊りになった後に救助された経験があります。そのときの体温は28度で、あと1度低ければ心臓が止まる寸前でした。その体験談と、低体温症についての本を出しました。「凍る体」という題名で、山と渓谷社より発行されています。当院の売店でも販売しています。どうか御一読ください。

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