コラム

副院長室から

雪山リスクマネジメント その症状と対策(5) 凍傷[2]

雪子さん 加温して感覚戻ったら歩いてもいいの?
ドクター 急速融解した後に歩かなければならない時は絶対加温して解凍してはならない。また、さっき説明した低体温症を伴っている場合は、体温を元に戻してから凍傷部位を加温すること。ここで、凍傷のときやってはいけないことをまとめてみよう。

 

①雪や他の道具でこすること
②低体温症を合併しているのに局所のみ加温すること
③再び凍る可能性があるのに加温を開始すること
④温風で温めること
⑤急速融解後に再凍結させること。これは予後を極端に悪くするので保温に留意してね
⑥急速融解後にその足や手を使うこと。凍傷を負い急速融解した足で歩かせてはいけない
⑦水癒を壊すこと。
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雪子さん ヒマラヤに行った人で指を切断した人の写真を見たことあるけど、どんな場合に切断になるの?
ドクター 凍傷がどこまで回復するか、あるいは切断を免れるかは、急性期にはわからないんだよ。ただし48時間以上、組織の血流が回復しない場合は、切断になることもある。場合によっては血管造影、骨シンチグラフィーなどの検査をし、凍傷が治るかダメかをある程度判断することはできる。重症の凍傷でも解凍後制時間以内ならば血栓溶解療法により、切断を免れる可能性が高まるので、できるだけ早く医療機関で診察を受けることが大切だよ。
雪子さん 痛いのに何日も様子を見ているのは良くないってことね。わかりました。

 

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ボウルのスキー滑降を楽しんできた羊蹄山を背にする船木と山崎。美しい雪山には低体温症の危険がひそむ。2011年2月、京極で。

 

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PROFILE ふなき・かずさ 1956年東京生まれ。1981年3月23日、北海道大学在学中にモンブランでクレバスに落ちて16時間宙吊りになり低体温症に陥る。1983年北海道大学医学部卒業。同学部循環器内科に入局。1989年苫小牧東病院開院。現在、社会医療法人平成醫塾苫小牧東病院常務理事、副院長としい地域医療に貢献している。著書に低体温症の罹患体験を記した「凍る体?低体温症の恐怖」(山と渓谷社、2002年)がある。

岳人 2012年2月号NO.776 平成24年1月14日発売
発行人/熊倉逸男 編集長/廣川建司
発行所/東京新聞 出版部 〒100-8505 東京都千代田区内幸2-1-4 中日新聞東京本社
印刷所/大日本印刷株式会社 ©東京新聞(中日新聞東京本社)

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